とうとう国民に見放され始めた「アベノリスク」の迷走 4/15(水) 15:16配信

とうとう国民に見放され始めた「アベノリスク」の迷走

新型コロナウイルスとの闘いは、一向に出口が見えない。そんな中、司令塔である安倍晋三首相が国民から見放されつつある。7年以上にわたる長期政権の中、安倍氏は危機対応で強さを発揮してきた。しかし「コロナ対応」で迷走が続き、支持率が急落している――。

【写真】星野源さん(左)の動画に合わせて自宅でくつろぐ様子を投稿した安倍晋三首相

■半月の間に5ポイント以上も下落する「緊急事態」

 4月10~13日に共同通信社が行った電話世論調査では、安倍内閣の支持率は3月26~28日に行った前回調査より5.1ポイント減の40.4%。不支持は43.0%で、支持を上回った。半月の間に5ポイント以上も下落するとは、こちらも「緊急事態」だ。

 ほぼ同時期に行った各社の調査もだいたい同様の傾向が出ている。理由ははっきりしている。「新型コロナ対応」のまずさだ。

 2月末、小中高校を一斉休校するように要請した時は、あまりに唐突な決定に対し、マスコミや野党はかみついたが、国民は比較的高い評価を下していた。だから3月の安倍内閣の支持は高止まりしていた。だが、4月に入り激変した。

■「休業補償すべきだ」という意見は82%に

 共同通信世論調査結果に戻ろう。

 まず緊急事態宣言のタイミングについて。「遅すぎた」が80.4%。適切だったはわずか16.3%。安倍氏は、小池百合子東京都知事らが早期の宣言を求めたが、なかなか決断しなかった。そして宣言とともに、民間事業所などへの休業要請を行おうとした小池氏に横やりを入れたことも響いたのだろう。

 小池氏は会見で「(自分が)代表取締役社長かなと思っていたら天の声がいろいろ聞こえまして、中間管理職になったような感じ」と、政府側の理不尽さを嘆いてみせた。感染者急増をみて、できるだけ早く、強力な措置を期待していた国民の多くは、小池氏の側に立ち、安倍氏に失望した。

 要請に応じて休業した店舗などへの休業補償を拒否し続けていることも評判が悪い。共同通信社の調査では「補償すべきだ」という意見は82%にのぼった。

星野源さんは「事前連絡や確認は一切なかった」とコメント

 全世帯に布マスクを2枚ずつ送るという方針にも厳しい評価が下された。「評価しない」が76.2%。「アベノマスク」という言葉は、国民の間にすっかり定着してしまった。この問題については4月3日に配信した「『2カ月待たせてマスク2枚』世界中がずっこけたアベノマスク騒動」を参照いただきたい。

 「コロナ対応」での失態という意味では、もう一つ指摘しておきたい。安倍氏は12日、自身が自宅で愛犬とくつろいだり、飲み物を飲んだり、読書したりする動画を首相官邸のインスタグラムなどに投稿した。これはシンガー・ソングライター星野源さんが「うちで踊ろう」という歌の動画をアップしたのに、安倍氏が応じたものだ。

 ただ、星野さんは動画に「誰か、この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないかな? 」というコメントを付けており、安倍氏の動画は呼びかけに応じているとは言いがたい。しかもこの非常時に優雅な姿を見せていることから、ネット上では「今そんなことをしている時か」といった批判が殺到した。

 星野さんも安倍氏の投稿に距離を取っているようで、12日深夜に「ひとつだけ。安倍晋三さんが上げられた“うちで踊ろう”の動画ですが、これまで様々な動画をアップして下さっている沢山の皆さんと同じ様に、僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません」というコメントを出している。

■危機管理が得意だった安倍政権が揺らいでいる理由

 安倍氏としては、自ら率先して自宅にとどまっている姿をみせて国民に外出自粛を呼び掛けたつもりだったのだろう。その気持ちは分からないではないが、今の国民は安倍氏から離れてしまっているから、こういう動画にも批判が殺到する。共同通信の調査は13日までの数字なので、安倍氏の動画をみて失望した人の声も一部で反映されていることだろう。

 安倍政権は危機管理を得意としてきた。北朝鮮の核ミサイル対応などに力を注いで来たことからそういう印象が備わったこともある。また東日本大震災やそれに伴う原発事故の対応にあたった民主党政権が、あまりにもお粗末だったこととの対比もあるだろう。

 いずれにしても災害、外交上の危機が生じると安倍政権は評価を上げることが多かった。今回、なぜそうならないのだろうか。

■「都=善、国=悪」の構図をつくってしまった戦犯

 最大の理由は、今回のような未曾有の危機の中で、政府の要となる人物がいないことがあげられる。今回のコロナ対応を巡っては、西村康稔経済再生担当相が責任者ということになっている。

 安倍内閣官房副長官を務めた西村氏は、安倍氏の信頼も厚い。経産省OBで、政策通でもある。ただし、言葉が軽く、相手の心のヒダが読めなくて冷たいという評価もついて回る。

 2018年7月、副長官時代の話。自民党は赤坂の議員宿舎で「赤坂自民亭」という懇親会を開いたのだが、日本列島に記録的な豪雨が襲うことが予想された夜だったこともあり、国民からは批判の声があがった。そのきっかけをつくったのが西村氏だった。

 「自民亭」で大いに盛り上がっている安倍氏自民党議員の写真を自身のツイッターでアップしてしまったのだ。西村氏はこの後、謝罪に追い込まれている。

■菅氏を退けたことが、コロナ対応の迷走の理由か

 今回でも「らしさ」が出ている。緊急事態宣言後の休業要請、休業補償などの問題については小池氏との交渉の窓口になっているが、話がまとまらない。世論操作にたけた小池氏に手玉に取られている印象は否めず「都=善、国=悪」の構図をつくってしまった戦犯でもある。コロナ対応の前面に立つには心もとない人物と言わざるを得ない。

 他にまとめ役を担う人材はいなかったのか。危機管理といえば、菅義偉官房長官の名がすぐにあがるが、今回のコロナ対応では影が薄い。

 最近、安倍氏と菅氏の間には、すきま風が吹いていると言われることが多い。その「すきま風」が原因で、安倍氏が菅氏を退け、それが遠因として政府のコロナ対応が迷走しているとすれば、国民には不幸なことだ。

 アベノミクスに批判的な勢力はしばしば、安倍氏の危うさを「アベノリスク」として追及していた。安倍政権のリスクが、今のような危機下で顔を出してきたのだろうか。