コロナで浮き彫り、日本の統治能力の絶望的低さ

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コロナで浮き彫り、日本の統治能力の絶望的低さ

5/9(土) 8:00配信

JBpress

 (舛添 要一:国際政治学者)

 新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、当初は5月6日までとしていた緊急事態宣言であるが、安倍晋三首相は、専門家会議に諮問して、5月4日に全国を対象に5月末まで延長することを決めた。実は、安倍首相は5月1日に、早々と1カ月の延長を発表したが、それは誰のアドバイスに依拠したものなのか。専門家会議の意見も聞かなかったのなら、それも困るし、逆に専門家会議、それも一部のメンバーの見解だけに耳を傾けたのなら、それはそれで問題である。

 長期政権の弊害か、政策決定過程が極めて不透明になっている。アベノマスクやアベノコラボなどでも指摘されてきたが、官邸官僚の意見しか採用しなくなったのか。国会や党という機関の存在意義がなくなるような大統領的首相になっている。

■ 感染者数減少でも緊急事態宣言延長

 4日の会見で驚いたのは、緊急事態宣言延期の最大の理由が、感染者増ではなく、医療提供体制の逼迫状態になってしまったことである。実は、同日に行われた専門家会議の説明でも、感染者数は減少しており、しかも、実効再生産数が、4月1日には1.0を下回っており、4月10日には、全国で0.7、東京で0.5まで低下しているという。

 海外では、実効再生産数が1.0を切ることを都市封鎖解除の基準としており、その論理でいくと、4月7日の緊急事態宣言そのものが必要だったのかという疑問すら呈したくなる。

 さらに、13の特定警戒都道府県とそれ以外を同列に緊急事態宣言の対象とするというのも、大きな問題である。ただ、自粛度合いは13の特定警戒都道府県とその他の地域とは対応を分けるという。宣言を発するときに、そもそも、感染者が数千人に上る東京都とゼロの岩手県を同列に扱ったことに問題はなかったのか。

 特定警戒都道府県以外の宮城県岩手県秋田県青森県香川県高知県鳥取県熊本県など、全国の半分以上の県では、5月7日以降は営業自粛などの措置を解除したり緩和したりする方針を決めている。宮城県の村井知事が言うように、今の措置をこのまま継続すれば、経済が壊滅的になるからである。妥当な判断である。

 感染防止の努力は必要であるが、日本中で、同調圧力が増し、「自粛警察」のような過剰の反応まで出てきているのは問題である。県外との人の移動を規制するにしても、徳島県のように県外ナンバーの車を監視し、嫌がらせをするような風潮は好ましくない。

 中世のヨーロッパで流行ったペストについて調べてみると、ベニスなどの貿易港に到着する船員が上陸して住民に感染させる場合もあれば、積み降ろした荷物からノミが出てきて、そのノミが人を咬んで感染させるケースも多々あった。

 今回のコロナウイルスも、金属やプラスチックに付着すると数日間は生き残ることができるというので、物品から感染する場合もある。かといって、完全に県外からの物品の移入を禁止してしまえば、県民の生活は成り立たなくなる。要は、感染防止策と経済とをいかにして両立させるかということである。

■ いまだ医療機関へ十分なマスク、防護服の供給できず

 医療体制が逼迫しているというが、これも都道府県別の詳細なデータが不足している。政府のコロナ対策の最大の問題点は、十分に情報が公開されていないことである。

 病床数のみならず、軽症者収容施設のベッド数、また医療従事者の数などが正確に把握されていなければ、医療崩壊という「脅迫」のみでは、政策を前に進めることはできない。全国で医療崩壊が進む大きな原因が院内感染である。