国民の恐怖に全く無関心…コロナが暴いた安倍首相のヤバい資質

国民の恐怖に全く無関心…コロナが暴いた安倍首相のヤバい資質

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200419-00071912-gendaibiz-pol

4/19(日) 6:01配信

現代ビジネス

 コロナウイルス禍で、さまざまなことがあからさまになった。政治家の資質もそうだ。一方の極に、明確な哲学に基づき、感動的な言葉で国民に犠牲と協力を求め、政府が行うことを約束したドイツ首相のメルケル。そして、もう一方の極には……

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危機にあたって国民の先頭に立ったエリザベス1世

 国が存亡の危機に直面した時、先頭に立って国民を奮い立たせた指導者は、歴史上、何人もいる。

 1588年7月、イングランド沖に、スペイン無敵艦隊が、イングランドに神の鉄槌を下すべく、その威容を現した。エリザベス女王は、捕らえられて火炙りにされることを覚悟したに違いない。

 彼女は、鎧に身を固め、捕虜になる危険を冒して最前線におもむき、全軍の先頭に立った。

 そして、歴史に残る演説(ティルベリー演説)を行なった。

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我が愛する民よ(My loving people)。
貴方たちの中で生き、そして死ぬために、戦いの熱気の真っ只中に私は来た。たとえ塵になろうとも……
我が神、我が王国、我が民、我が名誉、そして我が血のために! 
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 これを聞いた兵士たちは、たとえ死んでも悔いはないと思ったに違いない。

国民に犠牲を求め、政府の役割を約束したメルケル

 ドイツ首相のメルケルは、3月18日に、実に感動的で、しかも明確な内容の演説を行なった。

 まず、「すべての国民の皆さんが、この課題を自分の任務として理解されたならば、この課題は達成される、私はそう確信しています。ですから、申し上げます。事態は深刻です。(中略)第2次世界大戦以来、我が国においてこれほどまでに一致団結を要する挑戦はなかったのです」と、問題の深刻さを規定した。

 そして、つぎに、「公的な生活を中止すること」が必要だとした。

 ただし、「理性と将来を見据えた判断を持って国家が機能し続けるよう、供給は引き続き確保され、可能な限り多くの経済活動が維持できるようにします。」とした。

 さらに、「経済的影響を緩和させるため、そして何よりも皆さんの職場が確保されるよう、連邦政府は出来る限りのことをしていきます。企業と従業員がこの困難な試練を乗越えるために必要なものを支援していきます。そして安心していただきたいのは、食糧の供給については心配無用であり、スーパーの棚が1日で空になったとしてもすぐに補充される」と、政府の役割を約束した。

 最後に、「私たちがどれほど脆弱であるか、どれほど他者の思いやりある行動に依存しているかということ、それと同時に、私たちが協力し合うことでいかにお互いを守り、強めることができるか、ということです。状況は深刻で未解決ですが、お互いが規律を遵守し、実行することで状況は変わっていくでしょう」とした。

 いま国家の指導者がなすべきことは、「この危機と恐怖に耐えぬいてほしい、私も全力を尽くす、と自分の言葉で訴えることだ。メルケルのこの演説は、すべてのドイツ国民の心を動かすものだった。

 こうした指導者を持つドイツ国民を、心底羨ましく思う。

 言葉だけではない。ドイツの医療は機能し続けており、死亡率は欧米諸国の中で目立って低い。

「私は犬を抱いて自宅で寛いでいるよ」

 それに比べて、我が国の首相は何をしたか? 

 4月12日、「私は犬を抱いて自宅で寛いでいるよ」という動画が、「うちで踊ろう」という音楽とともに、SNSに流された。

 これを見た多くの国民は、「これが本当に首相の投稿であるはずはない。悪質なフェイクだ」と思った。「何か月も前に撮影されたものを、首相を中傷するため、誰かが、今そうしているかのように投稿したのだ」と思った。

 しかし、これは本当に首相が流したものだった。ありえないことではないか? 
 我々は、いま極限の恐怖の中にいる。医療が崩壊しつつあるので、コロナに感染したらどう扱われるか分からない。これは、底知れぬ恐怖だ。

 持病が悪化しても、恐くて病院に行けない。

 医療関係者たちは、医療崩壊寸前の現場で必死の努力を続けている。

 在宅勤務せよと政府は言っているが、満員電車で通勤しなくてはならない人が沢山いる。

 収入が激減したので、これから生活を維持できるかどうか分からない。

 メルケルが正しく指摘しているように、これは、第2次大戦以降、経験したことがなかった事態だ。

 そうした中で、最高権力者とその周りの人々だけが、この恐怖から逃れている。

 コロナは誰にも平等というが、感染した場合の扱われ方は違う。彼らは、熱が出ても、保健所に連絡して指示を受ける必要はないだろう。そうしなくとも手厚く看護される。そして、所得減少は、歳費削減2割だけだ。

 国民が極限の恐怖に直面する中で、恐怖を全く感じていない人たちがいるということがよく分かった。

 私の友人が2月下旬に言った。「コロナに感染するなら早いほうがよい。入院できるから。医療が崩壊 してからでは放置される」。そして、「権力者はこの恐怖は理解できないだろう」と言った。

 あまりに恐ろしい予言なので何とか忘れようとしていたが、思い出してしまった。

 「うちで踊ろう」というのだが、いまの日本で踊りたくなる人が、一体何人いるのだろう? ? ? 。国家が破綻するかもしれないという事態において、犬を抱いて寛いでいられる人がいる。それは、冷厳たる事実だ。しかし、塗炭の苦しみに喘ぐ国民にその姿をわざわざ見せる必要はない。

 暴動が起きないのは、暴動を起こす余裕さえ国民が持っていないからだ。

 あのトランプでさえ、戦時大統領だと言っている。エリザベスやメルケルには比ぶべくもないが、それでも、寝食を忘れて危機に当たるというメッセージを国民に送っているのだ。

 世界の指導者の中で、「私は、いま、自宅で優雅に寛いでいます」と公言した人がいるだろうか? 

経済対策――国は国民を見捨てた

 この首相が率いる政府は、コロナ感染に対して何をしてくれたか? 
 4月7日に、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策が閣議決定された。まず、布マスクを全家計に配ることとされた。

 何のために配るのか? 布マスクは感染拡大を防止があるとは言われていないので、これで何ができるのか? 心理的な安心感か? 
 これに必要な費用は466億円と言われる。やるべきことはいくらでもあるのに、それに充てる財源が、466億円消えてなくなる。

 こうした政策でも、実行を強いられる現場には大きな負担になる。そのマイナス効果の方がずっと大きい。

 役所の下っ端で働いた経験から言うと、やりがいのある仕事なら、どんなに辛くても耐えられる。しかし、馬鹿げた仕事で深夜2時まで振り回されるのは、耐えられない。
 
つぎに現金給付30万円。これは散々批判を浴びたあと、連立与党・公明党の強硬な抗議もあって4月17日に一律10万円給付に異例の変更が行われた。

 そもそも、この制度は悪用される危険があった。悪徳経営者なら、まず、所得制限を満たす従業員の給与を減らす。現金給付を受け取らせて、その穴埋めをさせる。これだけで、巨額の収入! 

 減収証明書の偽造対策を講じるという。しかし、雇い主が給与を実際に切り下げ、被用者が30万円貰い、後で山分けするのは、偽造ではない。これにどう対処するのか? 
 現金給付の総額は、3兆円程度と言われる。その多くが、悪賢い人たちの懐に入る。困っている人と損害を受けた人を助けるのでなく、悪賢い人たちに不当な利益を与える制度になる。

 こんな制度が現実に登場し、閣議決定されるなど、信じられない。これは、マスク2枚のようにジョークでは済まされない問題だ。

 そして、休業要請は自治体にまかせるが、政府は範囲拡大には反対した。さらに、「強制でなく要請だから補償しない」としている。

 営業自粛しても、家賃、光熱費、維持費は払う必要がある。もちろん、従業員の給与もある。関係者まで含めれば、収入減少者の範囲はきわめて大きくなる。

 マスクは配ったし、これから30万円配る。営業自粛要請や協力手当は自治体がやってくれる。政府は補償金を出さない。首相は自宅で寛ぐ。

 これが、日本政府が発している明確なメッセージだ。要するに、国民は捨てられたのだ。こうしたメッセージを明確に出している国は、他にない。

 繰り返すが、メルケルは、「企業と従業員がこの困難な試練を乗越えるために必要なものを支援していきます」と約束しているのだ。

首を斬られるとき、髭の心配をする政府

 外出減少率は、目標である8割にはなっていない。

 本来であれば、政府は、十分な休業補償金 を支出して休業要請をより厳格にし、コロナ感染 の拡大を何としても食い止めなければならない。経済を意図的に落ち込ませる一方で、 連鎖倒産防止 のために全力を尽くさなければならない。いままで経験したことのなかった難しい運営が求められている。

 これを実行するには、従来とはまったく異なる発想が要求される。

 イングランド銀行は、政府の短期国債を直接に引き受けることによって、市中にマネーを供給する。巨額の納税猶予や賃金補助を行なうからだ。日本でも、本当は同じことが必要だ。

 日本でも、短期国債の日銀引き受け発行は、財政法第5条の下で可能なことだ。何の制度改正も必要なく、政府が決断するだけでできる。

 だから、休業補償金も、年度内に審査して一部は回収する給付金 にすれば、必要なだけ、いくらでも給付できる。

 それにもかかわらず、麻生財務相は、「経済対策とプライマリーバランスの関係を考慮する必要がある」とした。

 財政健全化は、平時において重要な目標だ。これと緊急時の対応を混同してはならない。財政の健全性は、中長期的な観点から必要とされることだ。現在のような異常時にそれにこだわり、納税猶予や休業補償 を中途半端なものにすれば、経済が立ちゆかなくなる。

 いまは、すべてに優先して感染拡大を防止しなくてはならない。

 黒沢明監督「7人の侍」で、野武士の襲撃から村を守るため、侍を雇おうとする提案を村人たちで協議する場面がある。「娘が心配だ」という声があがる。長老は一喝した。

 「野伏せり来るだぞ! 首が飛ぶつうのに、ヒゲの心配してどうするだ!」

 いまの日本政府の指導者たちは、是非、この言葉を思い出してほしい。

コロナが暴いたもの

 コロナ後の世界(それが実現することを、何と切望することだろう)は、今年2月までの世界の連続ではありえない。あまりに多くの虚構が暴かれてしまったからだ。コロナが去ったとき、我々はただ呆然と立ちすくむだけだろう。

 コロナ は、様々なものの本当の姿を暴いてしまった。政治家の資質、所得が消滅していく経済で国が何をなしうるか。権力者が本当は何を考えているのか。

 今年1月の古新聞を見る。あの頃の世界の、何と平和だったことか。